“The road not taken” – 選ばれなかった道 

2019/07/27

あなたの選択の一つひとつが、未来の自分を形作る

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ある程度の読解力が付いた生徒さんに、必ず読んでもらう詩があります。

アメリカの詩人、ロバート・リー・フロストの代表作
【The Road Not Taken(選ばれなかった道)】です。

Two roads diverged in a yellow wood,
And sorry I could not travel both
And be one traveler, long I stood
And looked down one as far as I could
To where it bent in the undergrowth;

Then took the other, as just as fair,
And having perhaps the better claim,
Because it was grassy and wanted wear;
Though as for that the passing there
Had worn them really about the same,

And both that morning equally lay
In leaves no step had trodden black.
Oh, I kept the first for another day!
Yet knowing how way leads on to way,
I doubted if I should ever come back.

ある秋の日、静かな森のなか、小道を歩く旅人が、分かれ道にさしかかる。どちらの道を選ぼうか。二つの道にあまり違いはないのだが、あえて人が踏んだ跡が少ない方を選んでみた。もう一方の道は、いつかまたここに来るときまで取っておこう。心のどこかで、もう二度と戻ってこないかもしれない、と思いながら。

I shall be telling this with a sigh
Somewhere ages and ages hence:
Two roads diverged in a wood, and I―
I took the one less traveled by,
And that has made all the difference.

このことを、今、少しため息まじりに話そう。
ずっとずっと遠い昔、遥遠いある場所で、道が森のなかで二つに分かれていたんだよ。
そして私は、人のあまり通っていない方を選んだのだ、と。
そして、それが、すべての始まりだったのさ。
(そうでなければ、すべては違っていたはずさ)



この詩は、英文読解問題となって、過去にいくつかの大学入試に出題されてきました。(成蹊大学や島根大学など)この詩を題材とした長文問題や講義もよく見られます。大勢が歩いた道をordinary life(平凡な人生)に、あまり踏み荒らされていない道をunique life(独特な人生)になぞらえています。真っ白なキャンバスを目の前に、今まさに未来へ歩みだそうとする若者にピッタリの詩だからです。

私がこの詩に出会ったのは、大学のアメリカ文学の講義です。この詩がもつ独特の雰囲気が、なぜかとても印象深く、心に響いたのを覚えています。これまでの人生で、決断や選択を真剣に迷ったことは何度もありましたが、どちらかというと私は即断即決で、自分の直感や気もちのままに歩んできました。この詩の旅人のように、進んでみてもし違ったら、またその時に考えればいい、というくらいの気楽さもあったように思います。(そのくせ妙に心配性な一面もあるのですが。生徒さんは知っている)

この詩の最後で、旅人は、この道を選んだことがすべてを変えたと、感慨深げに語っています。それが後悔なのか、それとも人とは違う生き方ができたという喜びや満足感なのか。読み手によって、見解は様々です。ただ、Make all the difference という表現は、ネガティブな意味をもちません。ですから、その選択をしたからこそ今の自分がある、という幸福感や感謝と、あのときもう一方の道を選んでいたら?という思いが混じり合っているのかなあ、と、私は解釈しています。



ああ、あの時、別の道を選んでいたらどうなっていただろう…と思うこと、誰しも一度ならずあるのではないでしょうか。だからこそ、『私の選んだ道』ではなく、”The Road Not Taken”(選ばなかった道)なのでしょう。ある意味、人生とは常に選択の連続です。何を食べるか何を着るかといった小さなものから、一生を左右するような大きなものまで。選ばなかった道の先には、どんな未来が待ち受けていたのだろうと、思いを馳せるのも、時には大事なように感じます。これからやってくる分かれ道の選択に、多少なりとも影響を与えると思うからです。

若くても、最終決定は常に自分で下すべきだ、と私は考えています。それが、自分の人生に責任をもつということだからです。自分で決めたからこそ、難しい局面に立たされても踏ん張る力が生まれるのです。ちょっとやそっとのことではへこたれません。誰かが決めた道では、上手く行かないことを人のせいにしてしまうかもしれませんし、ここぞ!という所で踏ん張りがききません。

若者には、周りの人の意見に耳を傾け、色々なことに挑戦し、学び、考え、自分の足で立って人生を切り開いていってほしいと思います。みすずの生徒たちも、これから様々な決断を下す場面に出会うでしょう。「英語を使ってこんな仕事がしたい」「英語を極めるためにこの進路を選びたい」などと、生徒たちから決意の言葉を聞くたびに、彼らの未来への一歩をお手伝いしているという満足感に満たされます。その一方で、過去に私が何か一つでも違う選択をしていれば、今ここでこんな風に皆さんとお会いすることはなかっただろうという、何とも感慨深い気もちにもなるのです。人生って、不思議なものですね。

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